活動報告一覧

活動報告 | バングラデシュ出張報告

2018年度 JBMA派遣医師団報告

(2019年2月24日~3月1日)
東京女子医科大学八千代医療センター形成外科科長・教授
日本・バングラデシュ医療協会理事(広報担当)
竹内 正樹

 日本・バングラデシュ医療協会(JBMA)が支援している医師交流プログラムにより、これまで計14名のバングラデシュ医師が東京女月28日(木)(3月1日帰国)の日程で行いましたので報告させて頂きます。子医科大学病院での研修を行っています。日本から医師を派遣し、現地の臨床指導を行う第2のミッションを遂行していくため、第5回目のダッカ医科大学・国立形成外科熱傷センター (National Institute of Burn and Plastic Surgery, Dhaka Medical College & Hospital) 訪問を、2018年2月24日(日)~2月28日(木)(3月1日帰国)の日程で行いましたので報告させて頂きます。

 渡航直前の2月20日夜に、首都ダッカ旧市街で大規模火災が発生しました。少なくとも70人以上が死亡、40名以上の負傷が (2月22日現在) が確認されており、大変痛ましい事故となりました。同センターにも9名の患者が搬送され、すでに3名が亡くなったとのことです。この場をお借りして、犠牲者の方々に謹んで哀悼の意を表します。


写真左:火災後のダッカ旧市街(チャウクバザール)
写真右:ダッカ医科大学形成外科熱傷センターICUユニットと搬送された被害者
 幸い、我々が到着した時点ではダッカ市内に大きな混乱はなく、施設も通常の業務体制になっておりました。

 2019年2月24日、東京女子医科大学形成外科の長谷川祐基医師、仲本寛医師とともに成田空港を出発し、タイ経由で同日深夜にダッカに到着しました。ダッカシャジャール国際空港では、2016-2017年の留学生であるDr.Zakariaが出迎えをしてくれ、宿泊先のパンパシフィック・ショナルガオン・ダッカホテルへ向かいました。

 翌2月25日、ダッカ医科大学形成外科へ向かい、Kalam教授の出迎えを受け我々のミッションがスタートしました。

【活動スケジュール】

25日(月)患者診察、手術:右頬部~上口唇皮膚欠損(40歳女性)に対するCheek flap + 下口唇反転皮弁による再建

26日(火)手術:会陰部熱傷後瘢痕拘縮(2歳女性)に対する、前外側大腿皮弁による再建

27日(水)モーニングレクチャー(竹内:Lower lip reconstrcution、長谷川:Craniosynostosis)、建設中のSheikh Hasina National Institute of Burn and Plastic Surgery見学、Bangladesh Japan Institute of Radiology & Imagingでの技術指導

 まず、渡航前の打ち合わせで手術候補としていた患者さんを診察し。治療方針を決定しました。また現地スタッフから手術候補以外の患者さんの治療方針について意見を求められ、アドバイスを行いました。

 手術は現地のバングラデシュ医師も助手として参加し、協力して行いました。研修医を含む多くの医師が手術に参加し、みな熱心に学んでいました。
 モーニングカンファランスにはKalam教授をはじめとする多数のスタッフとレジデントが参加し、前日行われた手術症例の振り返りを行っていました。またこの時間に竹内と長谷川の2名がレクチャーを行い、活発な質疑応答がなされました。
 ダッカ医科大学以外の施設として、Bangladesh Japan Institute of Radiology & Imaging を訪問しました。責任者は今年6月に東京女子医科大学に短期留学していた放射線科医師のDr. Salahuddin Al Azadで、彼は現地の医師や技師に対して定期的な技術指導を行っているそうです。同施設で、下肢静脈疾患に対するエコー検査の技術教導を行いました。

 数年前に建設が始まったシェイクハシナ国立形成外科熱傷研究所病院(Sheikh Hasina National Institute of Burn and Plastic Surgery)ですが、今回現地スタッフ案内のもと、施設内を見学させていただきました。15階建ての巨大な建物は、すべて形成外科・熱傷患者さんのための施設となっています。工事は順調に進行しており来年度からの運用が予定されているとのことで、次回のミッションは新病院でできるかもしれません。





 最終日はJBMA現地事務局長シェイク先生がアレンジしてくださり、研修を終えたフェローの先生方に加え、在バングラデシュ日本国大使館の医務官をされている井上先生をお招きし、夕食会を行いました。
  今回は実働3日間と、期間が限られた中での活動となりました。新病院建設間近という明るいニュースがあった一方で、大規模火災による多数の被害者がでており、現地における形成外科的治療のニーズを改めて感じた次第です。 Kalam教授を始め現地スタッフから、継続した支援を求める声をいただきました。引き続きJBMA医師団がバングラデシュ訪問をする予定ですので、よろしくお願い申し上げます(今回のダッカ滞在では、Saneat先生、Zakaria先生に大変お世話になりました)。

 最後になりましたが、今回の渡航に多大なるご支援を賜りましたJBMAの設立会員ならびに施設館会員である企業各社および関係者の方々に厚く御礼申し上げます

2017年度 JBMA派遣医師団報告

(2018年2月24日~3月2日)
東京女子医科大学八千代医療センター形成外科科長・教授
日本・バングラデシュ医療協会理事(広報担当)
竹内 正樹
 日本・バングラデシュ医療協会(JBMA)が支援している医師交流プログラムにより、これまで計11名のバングラデシュ医師が東京女子医科大学病院での研修を行っています。日本から医師を派遣し、現地の臨床指導を行う第2のミッションを遂行していくため、第4回目のダッカ医科大学形成外科熱傷センター(National Institute of Burn and Plastic Surgery, Dhaka Medical College & Hospital)訪問を、2018年2月24日(土)~3月1日(木)に行いました(3月2日帰国)の日程で行いましたので報告します。

 2017年2月24日、東京女子医科大学形成外科の長谷川祐基医師、国立病院機構災害医療センター形成外科の橋本一輝医師とともに成田空港を出発し、タイ経由で同日深夜にダッカに到着しました。ダッカシャジャール国際空港では、JBMA留学生であったDr.Saneat (2015-2016年)とDr.Zakaria(2016-2017年)が出迎えをしてくれ、現地でのスケジュールを確認した後、宿泊先のパンパシフィック・ショナルガオン・ダッカホテルへ向かいました。

 翌2月25日は、ホテルからダッカ医科大学形成外科へ向かい、Kalam教授の出迎えを受け、我々のミッションがスタートしました。

【活動スケジュール】

25日(日) 患者診察、手術:熱傷後膝関節瘢痕拘縮(60 歳女性)に対する膝窩・後大腿筋膜プロペラ皮弁による再建術。

26日(月) モーニングレクチャー(竹内:Extended Lower Trapezius Island Myocutaneous Flap Based on the Dorsal Scapular Artery)。手術:片側完全唇顎口蓋裂 (生後3 か月男児) に対する口唇外鼻形成術。

27日(水) 手術:電撃傷による後頭部・右肩部骨露出を伴う皮膚欠損創(25 歳男性)に対する、僧帽筋皮弁+広背筋皮弁による再建術。

28日(木) モーニングレクチャー(長谷川:Vascular anomalies)。手術1 件目:右下腿皮膚欠損創(11 歳男性)に対する、腓腹神経を温存した遠位茎腓腹筋膜皮弁移植術。手術2 件目:骨露出を伴う後頭部皮膚欠損創(30 歳男性)に対する、僧帽筋皮弁+広背筋皮弁移植術。

 まず、渡航前の打ち合わせで手術候補としていた患者さんの診察し。治療方針を決定しました。これまでは新鮮外傷後の組織欠損・瘢痕拘縮や、唇裂を中心とした未治療の先天異常児などが主な患者さんでしたが、今年はそれらに加えて、外傷により損なわれた手指運動機能の改善や、口蓋裂術後の口蓋鼻腔瘻孔など、より高いレベルでの治療を希望する患者さんが増えている印象でした。また現地スタッフから手術候補以外の患者さんの治療方針について意見を求められ、アドバイスを行いました。

 手術は、現地のバングラデシュ医師も助手として協力して行いました。研修医を含む多くの医師が手術に参加し、みな熱心に学んでいました。
 モーニングカンファランスにはKalam 教授をはじめとする多数のスタッフとレジデントが参加し、前日行われた手術症例の振り返りを行っていました。またこの時間に竹内と長谷川の2 名がレクチャーを行い、活発な質疑応答がなされました。
 最終日は、JBMA 現地事務局長シェイク先生がアレンジしてくださり、日本での研修を終えた先生方を交えた夕食会が催されました。
 

今回は実働4日間の活動で、外傷後の再建に加えて本活動では初めて口唇裂の患児に対する手術を行いました。また1 例はダッカ医科大学で執刀された症例に対するリカバリ手術だったため、スタッフの先生方にも大いに関心を持って学んでいただけたと思います。同施設は形成外科的治療をもとめる患者さんであふれかえっており、 Kalam 教授を始め現地スタッフから、継続した支援を求める声をいただきました。引き続きJBMA 医師団がバングラデシュ訪問をする予定ですので、よろしくお願い申し上げます (今回のダッカ滞在では、Saneat 先生、Zakaria 先生に大変お世話になりました)。

 最後になりましたが、今回の渡航に多大なるご支援を賜りましたJBMA の設立会員ならびに施設館会員である企業各社および関係者の方々に厚く御礼申し上げます。

バングラデシュ表敬訪問報告

JBMA代表理事 野﨑 幹弘
 日本-バングラデシュ医療協会 (JBMA) は2012年8月に活動をスタートしました。バングラデシュに医療支援を行う目的として、先ずはダッカ医科大学病院と東京女子医科大学病院との交流協定を締結し ました。ダッカ医科大学が選抜する青年医師たちを東京女子医科大学病院で先進医療の研修が行える事業と、JBMAが派遣する医師団がダッカ医科大学病院で診療・教育を行う事業を主に行ってきました。この度JBMA代表団として野﨑代表理事と櫻井常務理事が、2017年2月25日から3月3日の日程でダッカの関連施設を表敬訪問しましたので報告します。
1) ダッカ医科大学本部
Ismail学長と副学長以下主要教授達の出迎えをうけ、有意義な会談を持つことが出来た。先ずIsmail学長にJBMAのこれまでの事業の協力に対して謝意を表す記念盾を贈呈した。その後副学長・主要教授達を交えこれまでのJBMA活動のreviewと今後の在り方について意見交換が行われた。Ismail学長から今後の医師交流の継続要請があり、野﨑代表から協定に基づく内容で了承するとの回答がなされた。
(1) ダッカ医科大学本部訪問、Ismai学長の出迎え (2) JBMAから謝意を表した記念楯
 (3) Ismail学長に記念楯贈呈
(4) 学長から歓迎の布帯を贈呈される (5) 学長・副学長とJBMA代表理事・常務理事の会談
(6) 学長及び教授首脳たちと会議
(JBMAの活動について意見交換)
(7) 会議に現地事務局長シェイク先生
2) ダッカ医科大学 熱傷・形成外科センター
 Sen教授とKalam教授、首脳スタッフたちの出迎えを受けた。これまでの事業への協力に対してJBMAから両教授に謝意を表して記念盾を贈呈した。
Sen教授から現在進められている国立熱傷センター建設の進捗状況とこの国家プロジェクトの抱負が語られた。Sen教授の後任として熱傷・形成外科を主宰しているKalam教授から、JBMAによる研修を経て帰国後ダッカ医科大学病院または関連病院で勤務しているフェローたちの活躍ぶりが報告された。外傷の中でも熱傷患者が最も多いバングラデシュの国状から、引き続き熱傷・形成外科専攻フェローをJBMAは招聘する意向を伝えると、両教授から感謝の意が表された。
(8) Kalam教授にJBMAから記念楯贈呈
(右から3人目がKalam教授)





(9) Sen教授に長年のJBMAへの協力に
感謝の記念楯を贈呈
3) United Hospital
JBMAの設立会員であるファストリテーリング及びYKKのダッカ在住社員と家族はJBMA現地事務局長Dr.シェイクの仲介によりUnited Hospitalに適宜受診している。そこでJBMA代表団として表敬訪問を行い、病院のCEOであるNajmul Hasan氏と事務局長Fardur Rahman Khan氏に謝意の記念盾を贈呈、両氏から引続き患者 受け入れについて快諾を受けた。







(10) United HospitalのCEO Najimul Hassan氏に
謝意を表し記念楯を贈呈

4) 設立会員現地事務所
ファストリテーリング及びYKKの現地事務所を表敬訪問、責任者から該当者のUnited Hospital受診状況を中心に伺った。具体的な問題点が抽出されたので、同席したJBMA現地事務局長シェイク先生が会社担当者と改善していくことが了承された。

5) 日本大使館
森田克哉医務官らと会談、JBMAの活動状況を報告した。必要に応じて支援する旨約束を受けたが、昨年6月の惨事以来諸事に静観している状況が説明された。

6) JBMAフェロー達との会合
JBMA現地事務局長シェイク先生のアレンジにより、ダッカ医科大学からSen教授らを迎え研修を終えたフェロー達との晩餐会を兼ねた会合が催された。参加者 10余名、誠に盛会であった。野崎代表理事と櫻井常務理事からJBMAフェロー達が今後増加していくことから、このフェロー達がバングラデシュで新たな社会活動を展開していくことを希望している旨の挨拶がなされた。

(11) 日本で臨床研修したJBMAフェローたちとの会合

2016年度 JBMA派遣医師団報告

(2017年3月19日~24日)
東京女子医科大学八千代医療センター形成外科科長・教授
日本・バングラデシュ医療協会理事 (広報担当)
竹内 正樹

日本・バングラデシュ医療協会 (JBMA) が支援している医師交流プログラムにより、これまで計9名のバングラデシュ医師が東京女子医科大学病院での研修を行っています。さらに日本から医師を派遣し、現地の臨床指導を行うという第2のミッションを遂行していくため、第3回目のダッカ医科大学形成外科熱傷センター (National Institute of Burn and Plastic Surgery, Dhaka Medical College & Hospital) 訪問を、2017年3月19日(日)~23日(木) に行いました (24日帰国)。
2017年3月19日、東京女子医科大学形成外科の長谷川祐基先生とともに、羽田空港を深夜に出発し、タイ経由で同日午後にダッカに到着しました。ダッカシャジャール国際空港では、2015-2016年のJBMA留学生であったDr.Sanietが自家用車 (TOYOTA車) で出迎えをしてくれ、現地でのスケジュールを確認した後、宿泊先のパンパシフィック・ショナルガオン・ダッカホテルへ向かいました。

翌3月20日は、ホテルからダッカ医科大学形成外科へ向かい、Kalam教授やDr.Senの出迎えを受け、我々のミッションがスタートしました。

【活動スケジュール】

20日(月)
モーニングセミナー参加、患者診察、Cleft and Craniofacial Center視察。
※麻酔科学会と重なり麻酔科医不在のため、この日は手術不可であった。
21日(火) 手術:熱傷後全外鼻欠損(20歳男性)に対する、外鼻再建手術。
22日(水) 手術:機械損傷後の頭蓋骨露出を伴う頭皮欠損(30歳女性)に対する、遊離広背筋皮弁移植術。
23日(木) 建設中の形成外科新病棟を視察し、帰国

モーニングカンファランスには、Kalam教授をはじめとするスタッフとレジデント(研修医)約40名が参加し、レジデントのプレゼンによる症例検討会が行われていました。スタッフからプレゼンターに対して教育的質問が次々と投げかけられ、緊張感と熱気があるカンファランスが行われていました。

Cleft and Craniofacial Centerには、口唇口蓋裂や稀な先天奇形である斜顔面裂の子供たちが、母親と一緒に入院していました。病室は清潔に保たれており、病室の奥には、口唇口蓋裂専用の手術室を兼ね備えています。手術室には、口蓋裂手術の際に用いられている手術用顕微鏡が置かれていました。

その後、渡航前の打ち合わせで手術候補としていた患者さんの診察を行いました。症例は外傷後の組織欠損・瘢痕拘縮や、四肢の先天奇形など幅広く、形成外科的治療を求める患者さんがたくさん待機している状況でした。現地スタッフから手術候補以外の患者さんの治療方針について意見を求められ、アドバイスを行う場面もありました。

手術は、現地のバングラデシュ医師も助手として協力して行いました。研修医を含む多くの医師が手術に参加し、みな熱心に学んでいました。

最終日は、Kalam教授の案内で、現在建設中の新病院 (Sheikh Hashina National Institute of Burn & Plastic Surgery) を見学しました。地下2階、地上17階建、360床を有する形成外科単独の病院になる予定で、ダッカ医科大学形成外科教室のさらなる発展が期待されます。

今回は実働2日間とやや短めの活動となりましたが、Kalam教授を始め現地スタッフから、継続した支援を求める声をいただきました。引き続きJBMA医師団がバングラデシュ訪問をする予定ですので、よろしくお願い申し上げます (今回のダッカ滞在では、Sumi先生のお世話になりました)。

最後になりましたが、今回の渡航に多大なるご支援を賜りましたJBMAの設立会員ならびに施設会員である企業各社および関係者の方々に厚く御礼申し上げます。

2015年度 JBMA派遣医師団報告

(2016年5月21日-5月27日)
東京女子医科大学八千代医療センター形成外科科長・教授
日本・バングラデシュ医療協会理事 (広報担当)
竹内 正樹

日本-バングラデシュ医療協会(JBMA)が支援している医師交流プログラムにより、すでに計7名のバングラデシュ医師が東京女子医科大学病院での研修をおこなっています。日本から医師を派遣し、現地の臨床指導をおこなう第2のミッションを遂行していくため、第2回目のダッカ医科大学形成外科熱傷センター(National Institute of Burn and Plastic Surgery, Dhaka Medical College & Hospital)訪問を2016年5月21日(土) ~26日(木)に行いました
(27日帰国)。

2016年5月21日、東京女子医科大学形成外科講師 (亀田総合病院形成外科部長) の田邊裕美先生、東京女子医科大学病院形成外科の最上真理子先生とともにシンガポール経由で同日深夜にダッカに到着しました。ダッカ・シャージャラル国際空港では、JBMA留学生第1号のDr.Humayraと空港職員の夫、JBMA現地事務局長の Dr.Sheikh Aleemuzzaman の出迎えを受けました。現地でのスケジュールの確認をした後、車で宿泊先のパンパシフィック・ショナルガオン・ダッカ・ホテルへ直行しました。

翌5月22日は、ホテルからダッカ医科大学形成外科へ向かい、Kalam教授Dr.Senらの出迎えを受け、われわれの今回のミッションがスタートしました。
歓待セレモニーの後、渡航前の情報提示により事前に手術症例候補として選定しておいた患者さんの診察をおこないました。先天異常から熱傷後瘢痕拘縮と疾患は多彩であり、診察の後、手術患者の最終決定および手術日程・術式をスタッフと確認しました。

【活動スケジュール】
22日(日) 患者診察、手術:右先天性母指欠損(12歳女児)に対する示指を利用した母指化手術
23日(月) “ Shab-e-barat (シャベバラット)”というイスラム教の断食前のお祭り明けの休日で病院休みのため、ダッカ郊外古都の視察
24日(火) モーニングレクチャー(竹内)、手術:左鼠径部~大腿部の熱傷後瘢痕拘縮(3歳男児)に対する遊離広背筋皮弁移植術
25日(水) モーニングレクチャー(田邊)、手術:交通外傷後の脛骨露出を伴う右下腿潰瘍(35歳男性)に対する遊離前外側大腿皮弁移植術
26日(木) 術後患者処置、手術:膝下部切断後の脛骨露出を伴う左下腿潰瘍(24歳男性)に対する外側上膝動脈穿通枝皮弁移植術


 手術には、バングラデシュ医師数名も助手として参加してくれました。
周りでは研修医を含む多くの医師が熱心に手術を見学していました。
われわれも解剖学的注意点や手術手技のポイントを逐次説明しながら、手術を進めていきました。
手術室の設備として、標準的な形成外科手術器械は、充足しつつある状態ですが、骨や皮膚採取用の電動系器械が不足していました。また糸・針などの消耗品の供給体制の不備や包帯・ガーゼといった衛生材料の質が低いのが現状でした。これらは短期的な物品支援では限界があり、物流システムならびに医療経費をどこで賄うかという保険医療体制の長期的な改善の必要性が痛感されました

また、手術前のモーニング・カンファレンスの時間にレクチャーを行いました。




Kalam教授をはじめ、スタッフ、レジデント(研修医) 40名ほどが集まり、レクチャー終了後、活発な質疑応答がなされました。また、研修医がプレゼンテーションを行った症例検討会では、われわれもコメントを述べさせて頂きました。

 ダッカ医科大学病院形成外科・熱傷センターでは、多くの患者さんが病室のみならず、廊下やエレベーターホールにあふれています。手術を待っている患者さんも多く、形成外科の需要が大きいことを実感しました。実際、われわれも時間の関係で、予定していた手術ができなかった症例もあり、さらなる継続した支援が必要と思われました。

 今回は実働4日間でしたが、現地での医療事情を肌で感じることができましたので、JBMAとしての医療支援体制の課題や問題点なども検討し、今後の支援に役立てたいと思います。
引き続き1~2回/年のペースでJBMA医師団がバングラデシュを訪問する予定です。よろしくお願い申し上げます。 (今回のダッカ滞在に関しては、前回同様、Humayra先生に大変お世話になりました。)

最後になりましたが、今回の渡航に多大なるご支援を賜りましたJBMAの設立会員ならびに施設会員である企業各社および関係者の方々に厚く御礼申し上げます。

2016年5月30日

2014年度 JBMA派遣医師団報告

東京女子医科大学八千代医療センター形成外科科長・教授
日本・バングラデシュ医療協会理事 (広報担当)
竹内 正樹

日本-バングラデシュ医療協会が支援している医師交流プログラムにより、すでに計4名のバングラデシュ医師が東京女子医科大学病院での研修をおこなっています。さらに今後、日本から医師を派遣し、現地の臨床指導をおこなう第2のミッションを遂行していくため、第1回目のダッカ医科大学形成外科訪問を2015年6月23日~25日に行いました。

2015年6月23日、東京女子医科大学形成外科の長谷川祐樹先生、日本大学形成外科の屋形有美先生とともにシンガポール経由で同日深夜にダッカに到着しました。ダッカ・シャージャラル国際空港では、JBMA留学生第1号のDr.Humayraと同僚のDr.Anwarulの出迎えを受けました。ちょうど我々と入れ違いに日本に一時帰国するJBMA現地事務局長のDr.Sheikh Aleemuzzamanとも空港でお会いし、現地でのスケジュールの確認をしました。その後、車で宿泊先のパンパシフィック・ショナルガオン・ダッカ・ホテルへ直行しました。

翌6月24日は、ホテルからダッカ医科大学形成外科へ向かい、Dr.Senらの出迎えを受けました。40名ほどのスタッフおよび研修医が集まる前で、8時半からレクチャーを約40分間行いました。その後、昼過ぎまで手術用顕微鏡が7台ほどあるMicrosurgical skill labで研修医向けの講習会を開きました。基礎練習を終えて、動物の血管を吻合するアドバンスコースとのことでした。ラットなどは手に入りにくいためか、入手容易なニワトリを使用することには少し驚きましたが、大腿動静脈の径は太く、吸入麻酔と抑制がうまくいけば吻合の練習には良いと思われました。血管吻合のデモンストレーションと指導を行いました。



講習会の合間にDr.Rahmanと翌日の手術患者の選択と病棟回診を行いました。熱傷後瘢痕拘縮患者をリクエストしたところ、日本ではお目にかかれないシビアな拘縮患者が並んでおりました。関節部の拘縮はほとんど関節脱臼、変形を伴っており、熱傷受傷後、病院に来るまでに治療もせず数か月間~数年間そのままになっているようです。おまけに患者が多すぎて、大学病院でも治療が追いついていない様子でした。今後われわれが手術支援を行う余地は十分にありそうです。

訪問した時期は、ちょうど “ラマダン” (イスラム教徒の断食期間) の最中でしたので、昼間は医師、看護師そして患者さんの多くが食事をしない中、我々のために用意してくれたランチBOXをオフィスで食べた後は、Dr.HumayraとDr. Anwarulがダッカ医科大学キャンパス・市内観光に連れていってくれました。しかし、市内は人も車も無秩序の交通事情で渋滞がひどく、渋滞がなければ20~30分くらいで行きそうな距離も2時間以上もかかり、ほとんど狭い車の中にいました。夜は、ダッカ市内の高級レストランへ形成外科スタッフとラマダン明け (その日は18時53分) のディナーに行きました。かつて東京女子医大に留学しており、現在別の病院の教授になったDr.Ashrafも同席してくれました。

6月25日朝は、ダッカ医科大学病院で、外務省医務官の齋木先生にお会いしました。齋木先生には現地医務官としてこれまでJBMAの事業へのご協力など多大なるご尽力を頂きましたが、7月からコンゴに赴任することになり、アルゼンチンから赴任される後任の森田先生との引継ぎを兼ねての病院長および学長への挨拶回りに同行させて頂きました。

病院長のDr.Mohammadおよび学長のDr.Ismailとの面談終了後、形成外科へ行き、前日に行ったマイクロサージャリ―講習会の修了書授与式とJBMAからのギフトである“マイクロサージャリ―器械セット”と“形成外科標準手術器械セット”の贈呈式を行いました。

贈呈式後は、手術室 (Operation Theatre) で昨日選んでおいた膝部熱傷後瘢
痕拘縮患者の手術 (逆行性後大腿筋膜皮弁術) を施行、7月から東京女子医科大学病院に留学予定のDr.Saneatが助手をしてくれました。手術室の設備は、数十年前から使用されている旧式のものが多く、術衣、シーツのみならず包帯もリユースされていました。長谷川先生が日本から持ってきてくれた衛生材料が役立ちました。今後はJBMAから寄付した手術器械が役に立ってくれることを期待します。

手術後は、Dr.Humayraの付添で空港に行き、深夜便でダッカを後にし、シンガポール経由で帰国の途につきました。 (Humayra先生には、大変お世話になりました。)

実質2日間の弾丸ツアーでしたが、まず道筋をつけるための訪問としては役目を果たしたのではないかと思います。今後も引き続き1~2回/年のペースでJBMA医師団がバングラデシュを訪問する予定です。

最後になりましたが、今回の渡航に多大なるご支援を賜りましたJBMAの設立会員ならびに施設会員である企業各社関係者様に厚く御礼申し上げます。

2015年6月30日